りつこの中に入り込んできた思いは強烈な寂しさだった。言いようのない、しかし何故か悲しみを伴うような寂しさではなかった。同時に夜景に素直に感動していてる素朴さも伝わった。

その頃のひろし君に伝えたかった。

「大丈夫、約15年ほどしたら私に出会えるんだよ。それまで頑張って生きてきてね。私、待ってるよ」

ひろし君が聖蹟桜ヶ丘の方を見ながら「きよしこのよる」を歌いはじめた。ゆっくりとしたテンポで、低く、小さく。