りつこはひろし君に電話をしようとケータイを取り出したが、ダイヤルせずにポケットにしまった。
彼の残存思念にアクセスするのは容易だった。しかも鮮明に彼の想いに触れることができた。そのあまりの鮮明さに視覚的な再生までしてしまった。
急な斜面を下におりる石段にひろし君が腰掛けていた。20歳代後半のひろし君だった。じっと夜景を見つめていた。半ばりつこ自身が作り出した「幻覚」と知っていながら思わず声をかけてしまった。
「ひろし君!」
もちろん反応は無かった。
彼の残存思念にアクセスするのは容易だった。しかも鮮明に彼の想いに触れることができた。そのあまりの鮮明さに視覚的な再生までしてしまった。
急な斜面を下におりる石段にひろし君が腰掛けていた。20歳代後半のひろし君だった。じっと夜景を見つめていた。半ばりつこ自身が作り出した「幻覚」と知っていながら思わず声をかけてしまった。
「ひろし君!」
もちろん反応は無かった。


