思えばこれもりつこのおかげだ。りつこと何事もなく平凡な暮らしを秋田で続けていたら脇町に来ることはできなかったかもしれない。タクシーから流れる町並みを噛みしめるように見つめた。

そんな私の思念を断ち切るようにタクシーの運転手が私に話しかけた。

「お仕事で脇町まで?」

「あ、いえ、ちょっと人に会いに」

とっさの事でまともに答えることが出来なかった。