「いや~、そんなそこまでは聞けませんよ。そんなに気になりますか?」

少しいたずらっぽく逆に運転手が聞いてきた。

私はため息をついて再びシートに深く座りなおした。

「あ、いや、なんか偶然だなぁと思って。どこに行く予定だったのかなって、単に興味持っただけですよ」

「そうですか。ちなみにお客さんはどちらまで?」

「松本から先は決めてない」

「へ?」

「気ままな旅なんですよ」

「優雅でいいですねぇ、私なんかこんな仕事してるとなかなか旅行なんて行けやしない」