「はい、彼は私に何でも話します。過去の遍歴はもちろん、だからすーちゃんのことも知ってました。街を歩いていても『あの子、かわいい』とか『ああいう脚、好きだなあ』とか平気で言うんですよ。そのたんびに私からつねられるんですけどね。それに女って男の浮気には敏感じゃないですか。なんとなくわかりますよね。でも私が言うのもなんですけど、彼には浮気する気配すらないんです」

「あら、ごちそうさま。彼のこと信じてるのね」

「う~ん、そういう意味じゃそうなんでしょうけど、私たち、信じてるとかっていう感じじゃないんです」

「?」

「信じてるって言葉自体、不信を覆すための言葉だと思ってるんです。だから信じるも信じないもないんです」