御客様に揉め事が気付かれぬよう、
麗子ママは、喬子と聖香を 控え室へと促す。
そして、自分も入り 扉を閉めると、
冷静ながらも 強い口調で言った。
「とうとう 御客様の前で。
うちの店に 泥を塗る気?
ふたりとも、いい加減になさい」
“え…
ふたりとも?
聖香が一方的に!…
!?
とうとう って… 気付いてた ってこと?
なら、
何故、聖香に注意しない??
私をスカウトした人が、何故、私を庇ってくれない?!”
喬子は、思いが交錯しながら、頭の中が 渦惑した。
聖香は、視線を落として見据えたまま、黙っている。
麗子ママが、言葉を続ける。
「此処は、格式の高い 高級クラブです。
程度の低いホステスは、いません。
今更、私にこんな事を言わせるの?聖香、
あなた、此処のNo.2でしょっ」
「…、申し訳ありません」
漸く、聖香が 口を開いた。
「御客様の前で失礼など、言語道断。
次は無い と、思ってちょうだい。
ちゃんと考えなさい」
麗子ママは、最後の言葉「ちゃんと考えなさい」のとき、喬子を見つめて言った。
「はい。
申し訳ありませんでした」
頭の中が、まだ渦惑で
この事柄を整理できてない状態だったが、
麗子ママに圧倒されて、
喬子は、従い、謝罪の言葉を述べた。


