「あたし、もう、ダメだ…」



冬休みが明け、一発目の言葉がそれだった。

ラインには、何だか楽しそうな写真が何枚も上げられていたけれど、あれは一体なんだったのだろう。
フェイクにしては出来過ぎた写真のような気もしたが。


「瑠衣ちゃん、大丈夫?」


私が心配して声をかけると、彼女はムスッとした表情になって、私に噛みついて来た。


「遥奏君の言うとおりに実行したのに、全く効果なかったの!!瑠衣ちゃんは友達として好きだけど、恋人として好きにはなれないってあっさり言われた!!」

「そうだったんだ…」


なんとなくこうなるという見当はついていたから、私の心にはどんな感情も生まれなかった。

ただ、それでもちゃんと戦った瑠衣ちゃんは称えてあげたいと思った。
勇気あるナイスファイトだった。


「あたしね、悔しいのは、彼をキライになれないこと!彼自身も本命にはまだ片思いで不本意な交際してるし、あたしの気持ちも分からないわけじゃないと思うから…」

「瑠衣ちゃんは良く頑張ったよ。きっと瑠衣ちゃんの気持ち、 ただ少し意識のズレっていうか、考え方の違いみたいなのがあって、それが邪魔しただけで 、ちゃんと届いたと思うよ」

「そう…かな?」

「そうだよ。大丈夫。絶対、わかってくれてるよ。だって瑠衣ちゃんがずーっと好きな人だよ。大丈夫に決まってるじゃん」


私が必死に慰めると、瑠衣ちゃんは私の胸を 借りて 思う存分泣いた。

幸いにも放課後で体育館の裏だったから、誰にも邪魔されることはなかった。


「あたし…はるちん、大好き!」


彼女は私にまでド直球の愛を伝えて来た。

そのストレートな球を受け止めてくれる人はきっといると思う。
その人に出会うまで長い長い道のりになるかもしれないけれど、彼女の粘り強さで乗り越えてほしい。
乗り越えた先に瑠衣ちゃんを強く抱き締めてくれる人がいる。

私はそう信じたい。
いや、信じている。



「ハル、ボール磨いて!!」

「あと、タオルと水筒、よろしく!!」


体育館から私を呼ぶ声がした。

腕時計をちらりと見ると、もう練習が始まる時間をとっくに過ぎていた。


「ごめん、私行かなきゃ。仕事、結構あるから」

「わかった…。マネージャー、大変だと思うけど、頑張ってね」



―――――そう。

私はバスケ部のマネージャーになったのだ。

うかうかしてはいられない。


新幹線のようにビューーーっと勢い良く走って行った。









肌をすり抜ける風はまだ冷たかった。