「久しぶりだな、ハルカちゃ~ん。元気にしてた?」
「華々しい引退試合の後に決闘なんて上等じゃん。お前がいなくなって強くなった俺たちをぼーっと突っ立って見てるがいい。どうせ、手出せねえから」
「1本目で勝負つけてやるよ」
先輩達が色々と挑発してきたが、遥奏くんはそんなのお構いなしという感じでずっとバスケットゴールだけを見つめて意識を集中させていた。
2階にいても、ただならぬ緊張感が伝わって来て、胸の鼓動が止まらない。
まるで、太鼓がドンドン鳴っているかのような衝撃、振動を感じる。
体育館は男達のプライドとプライドがぶつかり合って軋みそうだった。
「では、3ポイントシュート対決を始めます!先攻は先輩チーム、藤木先輩から」
宙太くんの声はわずかに震えていた。
きっと目の前の筆舌に尽くしがたい雰囲気に圧倒されているんだろう。
そして、ここで入れられたら、親友が追い詰められるというプレッシャーに潰されそうになっているに違いない。
宙太くんは優しいから。
遥奏くんとは一味違う優しさを持っているから、それが今、莫大な、目に見えない力に制圧されそうになっているんだ。
私は、2人の思いを感じながら、両手を交差させた。
神様、
どうか…
どうか彼を…
勝たせて。
「じゃあ、行きま~す」
先輩の手から離れたボールは、小さな弧を描き、ゴールにぶつかることなく、無様に落ちていった。
「やっべえ…」
「藤木、何やってんだよ!」
先輩達の顔から余裕が消えた。
さっきまでとは打って変わり、意識が明後日の方向に飛んで行ってしまっているように見えた。
「次、遥奏」
いよいよ、遥奏くんの番。
ここで決めれば勝ちだ。
なのに、彼は動かなかった。
じっと天を仰ぎ、微動だにしない。
「おい、遥奏!!」
「やっぱり、試合しましょう。先輩達全員、オレと勝負して下さい」
「なんだよ、テメエ!!俺らを舐めてんのか!?」
「オレはちゃんと勝ちたいんです。先輩達7人全員に勝たなきゃ、意味ないんです」
遥奏くんの目には青い炎が燃えていて、一歩も引かないという確固たる決意が感じられた。
最後まで戦い抜くんだ…
ダイヤモンドのように硬い意志が私には見えた気がした。
「わかった、やってやるよ。1対7。どうせお前に勝ち目は無いんだからな。秒殺してやるよ!」
遥奏くんは先輩達を睨み付けてから、コートに進み出た。
先輩達はそれぞれ、思い思いの場所に着く。
宙太くんは彼らの間に立ち、ボールを掲げた。
遂に運命のラストゲームが始まる。
「ゲーム…セット!!」
宙太くんの掛け声と同時にボールが空を切り、高く上がった。
一番背の高い先輩がボールに触れ、別の先輩の手に渡る。
そこからドリブルで先輩チームのゴールに向かって全員が一斉に走って行く。
ああ…
私は目をつぶった。
見ていられなかった。
遥奏くんは何でこんな不利なことをしたの?
どうして…
「アオハル!!目、開けろ!」
宙太くんのドデカい声が体育館にこだました。
私はびっくりして自然と目が開いた。
…あれ?
ボールは遥奏くんの右手でリズム良くバウンドしていた。
遥奏くんはドリブルをして、3ポイントラインまで来ると、立ち止まって膝を軽く曲げた。
手からボールが鮮やかに放たれ、ゴールに一直線に向かって行く。
ボールは遥奏くん自身だった。
彼の意志がそこに込められていた。
初めて見た…
こんなきれいな弧を描くシュートを…
私は2階席から、その瞬間を見ていた。
「華々しい引退試合の後に決闘なんて上等じゃん。お前がいなくなって強くなった俺たちをぼーっと突っ立って見てるがいい。どうせ、手出せねえから」
「1本目で勝負つけてやるよ」
先輩達が色々と挑発してきたが、遥奏くんはそんなのお構いなしという感じでずっとバスケットゴールだけを見つめて意識を集中させていた。
2階にいても、ただならぬ緊張感が伝わって来て、胸の鼓動が止まらない。
まるで、太鼓がドンドン鳴っているかのような衝撃、振動を感じる。
体育館は男達のプライドとプライドがぶつかり合って軋みそうだった。
「では、3ポイントシュート対決を始めます!先攻は先輩チーム、藤木先輩から」
宙太くんの声はわずかに震えていた。
きっと目の前の筆舌に尽くしがたい雰囲気に圧倒されているんだろう。
そして、ここで入れられたら、親友が追い詰められるというプレッシャーに潰されそうになっているに違いない。
宙太くんは優しいから。
遥奏くんとは一味違う優しさを持っているから、それが今、莫大な、目に見えない力に制圧されそうになっているんだ。
私は、2人の思いを感じながら、両手を交差させた。
神様、
どうか…
どうか彼を…
勝たせて。
「じゃあ、行きま~す」
先輩の手から離れたボールは、小さな弧を描き、ゴールにぶつかることなく、無様に落ちていった。
「やっべえ…」
「藤木、何やってんだよ!」
先輩達の顔から余裕が消えた。
さっきまでとは打って変わり、意識が明後日の方向に飛んで行ってしまっているように見えた。
「次、遥奏」
いよいよ、遥奏くんの番。
ここで決めれば勝ちだ。
なのに、彼は動かなかった。
じっと天を仰ぎ、微動だにしない。
「おい、遥奏!!」
「やっぱり、試合しましょう。先輩達全員、オレと勝負して下さい」
「なんだよ、テメエ!!俺らを舐めてんのか!?」
「オレはちゃんと勝ちたいんです。先輩達7人全員に勝たなきゃ、意味ないんです」
遥奏くんの目には青い炎が燃えていて、一歩も引かないという確固たる決意が感じられた。
最後まで戦い抜くんだ…
ダイヤモンドのように硬い意志が私には見えた気がした。
「わかった、やってやるよ。1対7。どうせお前に勝ち目は無いんだからな。秒殺してやるよ!」
遥奏くんは先輩達を睨み付けてから、コートに進み出た。
先輩達はそれぞれ、思い思いの場所に着く。
宙太くんは彼らの間に立ち、ボールを掲げた。
遂に運命のラストゲームが始まる。
「ゲーム…セット!!」
宙太くんの掛け声と同時にボールが空を切り、高く上がった。
一番背の高い先輩がボールに触れ、別の先輩の手に渡る。
そこからドリブルで先輩チームのゴールに向かって全員が一斉に走って行く。
ああ…
私は目をつぶった。
見ていられなかった。
遥奏くんは何でこんな不利なことをしたの?
どうして…
「アオハル!!目、開けろ!」
宙太くんのドデカい声が体育館にこだました。
私はびっくりして自然と目が開いた。
…あれ?
ボールは遥奏くんの右手でリズム良くバウンドしていた。
遥奏くんはドリブルをして、3ポイントラインまで来ると、立ち止まって膝を軽く曲げた。
手からボールが鮮やかに放たれ、ゴールに一直線に向かって行く。
ボールは遥奏くん自身だった。
彼の意志がそこに込められていた。
初めて見た…
こんなきれいな弧を描くシュートを…
私は2階席から、その瞬間を見ていた。



