決闘の日はあっという間にやって来た。


私は決闘の前日にその事実を知らされ、心の準備もままならないまま、当日の朝を迎えた。

引退試合が始まるのは10時。
お昼を挟んで、お別れ会をし、部の解散が16時。
そして運命の決闘は17時から。

遥奏くんは決闘にしか参加しないらしく、それまでは自宅待機だ。

午前中は低血圧の影響で起きられないから最終練習をするにしても、あまり時間は取れなさそうだ。


私はいつも以上に早く起きてしまい、退屈だった。

勉強をしようとしても、頭に遥奏くんのことがよぎって全然集中出来なかったし、バイトも入れて無かったから、気を紛らわすことも出来なかった。


それくらい彼を心配していたんだ。


最初はまた問題児か…なんて溜め息混じりの日々を送っていたのに、こんなにも彼を思うようになるなんて考えもしていなかった。





いつか読んだ心理学の本にこんな一節が書かれていた。


人間は長く接するうちに恋に落ちることがある。


まさにその通りだと思った。


遥奏くんのところに毎日通っているうちにどんどん好きになっていった。

徐々に一方的な話から2人の対話になっていってすごくすごく嬉しかった。

接する時間が長くなればなるほど、惹かれていくんだ。



―――――信じよう、遥奏くんのこと。



彼なら出来る。

絶対、勝てる!


私が彼をコートに戻すから、


その瞬間をしっかり見届けるから、


だから…


大丈夫。


きっと、大丈夫。


絶対、大丈夫。





私は時計の針を見つめながら、彼の勝利を祈った。