変わらない日常が続き、宙太くんも高体連に向けて練習が忙しくなって来た頃。
私はその日も定刻通り、保健室に足を運んだ。
やはりこちらに背を向け、私に寝顔を見られないように毛布をガッツリ頭まで被っている。
よし…!
バサッ。
「おい、何すんだよ!」
私が勢いよく毛布を払いのけると、思った通りの反応が返って来た。
彼へのドッキリ作戦の開始だ。
「ジャジャーン!!」
私は鞄の中からお弁当を出した。
遥奏くんが勘弁してくれと言いたげな顔で私を一瞥した。
「宙太くんに聞いたよ。ずーっと寝てばっかりで朝も昼も食べてないんだって?それじゃあ元気出ないじゃん。だから、私が作って来た。食べてくれると嬉しいなぁ…」
私が嫌みたらしくそう言うと、彼は体を横にしたままこちらに顔だけを見せた。
「要らない。オレ、腹減ってない」
「人間は運動してなくたって、エネルギーを使ってるの。眠るのにもエネルギーは必要だし、食べなきゃ死んじゃうよ」
「なら、死にたい」
ああ…
これが本音か…
意外にも、この作戦により彼の本当の気持ちを知ることが出来た。
私は更に粘り、たたみかける。
「死にたいなら、今すぐ屋上から飛び降りて。私もついて行く」
どう出るかなと彼を見ると、ゆっくりと上半身を起こし、上履きを履いて立ち上がろうとした。
しかし、バランスを崩してその場に倒れ込んでしまった。
まさかそうなるとは予想もしていなかった私は、慌てて彼に駆け寄った。
「大丈夫?」
真っ青な顔で私を睨みつけてくる。
「大丈夫って、お前が心配してどうすんだよ。お前が飛び降りろって言ったんだからな!」
ハッと我に帰り、必死に言葉を探す。
「前言撤回。もう良い。なんとなく遥奏くんの今の状態わかったから」
―――私が大切に思って、決して忘れないあの人は、ちょっと強引なところがあった。
患者さんを挑発し、本性や本音を暴くんだ。
今になって役立つとは思ってもみなかった。
「起立性低血圧だね。朝礼で倒れたりする人もこれが原因。遥奏くんもそうだと思う。病院には行った?」
彼は黙ってうつむく。
ほったらかしにしていたのか…。
また私の仕事が増える予感がした。
「今週末、病院行って来て。行かない場合、私も宙太くんもついて行きます。
…さあ、どうしますか?」
「お前って…」
遥奏くんが少しだけ微笑みながら、私を見つめた。
心臓がドクンと鳴るのがわかった。
手に痺れを感じる。
不意に落ちた…
これって…
この感覚って…
「お前って、看護師?」
「べ、別に…。目指してはいるけど」
「超、向いてる。こんな女子、初めて」
喜んでる?
楽しんでる?
彼の感情が読めない。
とにかく、彼はクスクスと忍び笑いをしていた。
その笑顔に私の心がくすぐられた。
「病院、行くよ。だから、名前、もう一度、教えて」
なんか…
なんか…
なんか…
私…
どうしちゃったの?
心臓が壊れそうなくらいバクバクしている。
体がポカポカしてきて、急にインフルエンザにかかって高熱が出たみたいな感覚に陥る。
「もしも~し、聞いてる?」
「あっ…えっと、その…蒼井晴香です」
「蒼井さんね。今週末、病院ついて行くんでしょ?よろしく」
えっ…
えっ…
ええーーーーーーーーー!?
ビックリさせるつもりが逆にビックリさせられてしまったのだった。
私はその日も定刻通り、保健室に足を運んだ。
やはりこちらに背を向け、私に寝顔を見られないように毛布をガッツリ頭まで被っている。
よし…!
バサッ。
「おい、何すんだよ!」
私が勢いよく毛布を払いのけると、思った通りの反応が返って来た。
彼へのドッキリ作戦の開始だ。
「ジャジャーン!!」
私は鞄の中からお弁当を出した。
遥奏くんが勘弁してくれと言いたげな顔で私を一瞥した。
「宙太くんに聞いたよ。ずーっと寝てばっかりで朝も昼も食べてないんだって?それじゃあ元気出ないじゃん。だから、私が作って来た。食べてくれると嬉しいなぁ…」
私が嫌みたらしくそう言うと、彼は体を横にしたままこちらに顔だけを見せた。
「要らない。オレ、腹減ってない」
「人間は運動してなくたって、エネルギーを使ってるの。眠るのにもエネルギーは必要だし、食べなきゃ死んじゃうよ」
「なら、死にたい」
ああ…
これが本音か…
意外にも、この作戦により彼の本当の気持ちを知ることが出来た。
私は更に粘り、たたみかける。
「死にたいなら、今すぐ屋上から飛び降りて。私もついて行く」
どう出るかなと彼を見ると、ゆっくりと上半身を起こし、上履きを履いて立ち上がろうとした。
しかし、バランスを崩してその場に倒れ込んでしまった。
まさかそうなるとは予想もしていなかった私は、慌てて彼に駆け寄った。
「大丈夫?」
真っ青な顔で私を睨みつけてくる。
「大丈夫って、お前が心配してどうすんだよ。お前が飛び降りろって言ったんだからな!」
ハッと我に帰り、必死に言葉を探す。
「前言撤回。もう良い。なんとなく遥奏くんの今の状態わかったから」
―――私が大切に思って、決して忘れないあの人は、ちょっと強引なところがあった。
患者さんを挑発し、本性や本音を暴くんだ。
今になって役立つとは思ってもみなかった。
「起立性低血圧だね。朝礼で倒れたりする人もこれが原因。遥奏くんもそうだと思う。病院には行った?」
彼は黙ってうつむく。
ほったらかしにしていたのか…。
また私の仕事が増える予感がした。
「今週末、病院行って来て。行かない場合、私も宙太くんもついて行きます。
…さあ、どうしますか?」
「お前って…」
遥奏くんが少しだけ微笑みながら、私を見つめた。
心臓がドクンと鳴るのがわかった。
手に痺れを感じる。
不意に落ちた…
これって…
この感覚って…
「お前って、看護師?」
「べ、別に…。目指してはいるけど」
「超、向いてる。こんな女子、初めて」
喜んでる?
楽しんでる?
彼の感情が読めない。
とにかく、彼はクスクスと忍び笑いをしていた。
その笑顔に私の心がくすぐられた。
「病院、行くよ。だから、名前、もう一度、教えて」
なんか…
なんか…
なんか…
私…
どうしちゃったの?
心臓が壊れそうなくらいバクバクしている。
体がポカポカしてきて、急にインフルエンザにかかって高熱が出たみたいな感覚に陥る。
「もしも~し、聞いてる?」
「あっ…えっと、その…蒼井晴香です」
「蒼井さんね。今週末、病院ついて行くんでしょ?よろしく」
えっ…
えっ…
ええーーーーーーーーー!?
ビックリさせるつもりが逆にビックリさせられてしまったのだった。



