HARUKA~恋~

海へと真っ直ぐ続く道を私は早足で歩いた。

街灯はあるけれど、12時を回っていることもあり、なんだか薄気味悪い。
鬱蒼と生い茂る木々が風に揺れるだけでもビクビクし、足が止まりかけたが、一応浜辺に出ることが出来た。




満月が、青くて少し暗い夜の海を優しく照らしていた。

小さな波が海岸に打ち寄せ、消えてはまた新たな波が出来る。

波がキラキラと光っているように見えて、
まるで天の川のようだった。





 



星…



私がずっと探している星…




どこだろう?



どこにいるんだろう?




星に手を伸ばしても掴めるはずも無く、私の左手が力無く元の位置に戻る。





はあーーー。





ため息が漏れ出た。










と、その時だった。








「蒼井さん」






えっ…





いや、まさか…





そんな訳…






驚いて恐る恐る振り返ると、彼がいた。


「遥奏くん…」


私が呟くと彼はにこりと笑って私の右手を握った。


「蒼井さん、あっち行こ」


私は彼に手を引かれながら、階段を下り、砂浜に向かって行った。

握られた右手に熱を感じる。

それが電導して、頬が火照り、背中から汗が吹き出て、左手は硬直した。


「ここ、座ろう」


遥奏くんに促され、私は彼の隣に腰掛けた。



彼が規則正しく呼吸するのを感じる。

私の心臓は、またも破裂しそうなくらいにドキンドキン跳ね上がっている。

今夜は本当に眠れる気がしない。


「蒼井さんも寝れなくて来たの?」

「うん、まあ…」


そこから会話が続かない。

何を話題にしたら良いかも全然思いつかない。

脳が麻痺して、思考は停止中だ。





心地良い潮風が肌をすり抜けて行く。



どこからか、ウミネコの声が聞こえる。

ウミネコ達もまた、眠れないのだろうか。



星や月は一層輝きを増す。 

2人きりのプラネタリウム。


何て幸せなんだろう、私…。
ずっとこのまま、夜があけないでほしい。







波のザブーンザブーンと言う音が心を落ち着かせる。





一言も喋らないままどれくらい時間を過ごしただろうか。


腕時計を見ようとすると、遥奏くんが唐突に呟いた。
   

「蒼井さんと出会ってから、もう4ヶ月か…」

「…うん、そうだね」


私たちは、出会った春を思い出していた。