午後からはクラス対抗のビーチバレー大会が開催されることになっており、生徒たちは再び活気付いて来た。
「つうか、ビーチバレー前に焼きそばってあり得なくね?」
「文句言わないで早く食べちゃいなよ。これから試合でしょ?」
宙太くんは相変わらず皮肉る。
運動前は体が重くなるからバナナだけ食べられれば良いとか、持論を切々と私に語ってくる。
私は相槌を適当に打ってその場をやり過ごす。
「アオハル、俺の話聞いてんの?」
「聞いてる、聞いてる」
「絶対ウソだろ!じゃあ、俺はなんて言ったと思う?」
「運動前は食べたくない。筋トレ終わった後には牛乳飲むと筋肉付きやすくなる。プロテインは高価だから俺は牛乳を筋トレの相棒にしてる」
私は聞いたままに答えてあげた。
彼は口をあんぐりと開け、右手に持った箸を砂の上に落下させてしまった。
「宙太くん、大丈夫?おーい」
彼の目の前で手を振ってもびくともしない。
驚き過ぎだよ。
私の耳は意外と優れているんだからね、馬鹿にしないでよ。
私がそんなことを思っていると、突如長い腕がにょきっと目の前に出現した。
「宙太、あ~ん」
宙太くんの口に焼きそばが詰め込まれる。
さすがの彼も口に異物を感じたらしく、頬を大きく膨らませて口をもぐもぐ動かし始める。
「う゛ほっ」
「キャーッ!汚~い!」
「やだ、こっちに飛ばさないで!」
女子たちに煙たがられ、散々な目に遭う宙太くんを私と遥奏くんは大口を開けて笑った。
私は喉に詰まって苦しむ彼に笑いながらも水をあげる。
まともな呼吸ができるまでの時間、笑いが止まることは無かった。
抑えようとしても、脳裏に変なダンスをしながら喉元を押さえる宙太くんの姿がフラッシュバックしてきてやっぱり笑ってしまうんだ。
「お前ら、さいってえ!!人のこと笑いやがって!!」
「アハハハハ…」
「宙太、最高におもしれ~」
「あのなあ!?」
宙太くんが遥奏くんに殴りかかろうとしたとき、ちょうどあの鬼教師が通りかかった。
彼が逃げ出そうとして、首根っこをつままれる。
「お前は昨日の!?」
「俺たち、超仲良しで、今じゃれ合ってたんです!」
「ふざけるな!!こっちに来い!!」
そのまま彼は連行されて行った。
反省文を書かされるに違いない。
なんか酷いことしちゃったかな…と一瞬思ったけど、すぐにその思いは蒸発し、自然と口元が緩んできた。
「アハハハハ!」
「アハハハハ!!」
私たちは同時に吹き出した。
「宙太、ざまあ見ろ!お前の分までオレが試合に出てモテモテになってやるよ!」
遥奏くんは青くて遙か彼方まで続いている海にそう叫んだ。
「午前中の分、ちゃんと取り返してね」
「分かった。だから、蒼井さん、ちゃんと見ててね」
私はドキッとして、一気に顔が硬直した。
不意打ち好きの彼に、また1本取られた。
「じゃあ、オレ練習してくる」
私に背を向け、駆け出す。
と思ったが、彼は振り返って、私の頬に手を伸ばし、思いっ切りつねった。
「痛いよ」
「蒼井さん、笑顔をお忘れなく」
そして今度こそ行ってしまった。
熱を帯びた頬に手をやる。
思い出すだけで胸がドキドキして、いつまでも鳴り止まない。
私、
私、
私、
遥奏くんに、
触られた…
良くわからない感情の渦が巻き起こって、ふわふわと浮いているような気分になった。
しかし、ふわふわしていたのもつかの間。
私が頬に手を当て、海を見ていると風の音とは明らかに違う何かを右耳がキャッチした。
「…」
何か言った?
誰が言った?
…空耳?
午後0時32分28秒。
笑う私を誰かが見ていた。
風は何も教えてくれない。
「つうか、ビーチバレー前に焼きそばってあり得なくね?」
「文句言わないで早く食べちゃいなよ。これから試合でしょ?」
宙太くんは相変わらず皮肉る。
運動前は体が重くなるからバナナだけ食べられれば良いとか、持論を切々と私に語ってくる。
私は相槌を適当に打ってその場をやり過ごす。
「アオハル、俺の話聞いてんの?」
「聞いてる、聞いてる」
「絶対ウソだろ!じゃあ、俺はなんて言ったと思う?」
「運動前は食べたくない。筋トレ終わった後には牛乳飲むと筋肉付きやすくなる。プロテインは高価だから俺は牛乳を筋トレの相棒にしてる」
私は聞いたままに答えてあげた。
彼は口をあんぐりと開け、右手に持った箸を砂の上に落下させてしまった。
「宙太くん、大丈夫?おーい」
彼の目の前で手を振ってもびくともしない。
驚き過ぎだよ。
私の耳は意外と優れているんだからね、馬鹿にしないでよ。
私がそんなことを思っていると、突如長い腕がにょきっと目の前に出現した。
「宙太、あ~ん」
宙太くんの口に焼きそばが詰め込まれる。
さすがの彼も口に異物を感じたらしく、頬を大きく膨らませて口をもぐもぐ動かし始める。
「う゛ほっ」
「キャーッ!汚~い!」
「やだ、こっちに飛ばさないで!」
女子たちに煙たがられ、散々な目に遭う宙太くんを私と遥奏くんは大口を開けて笑った。
私は喉に詰まって苦しむ彼に笑いながらも水をあげる。
まともな呼吸ができるまでの時間、笑いが止まることは無かった。
抑えようとしても、脳裏に変なダンスをしながら喉元を押さえる宙太くんの姿がフラッシュバックしてきてやっぱり笑ってしまうんだ。
「お前ら、さいってえ!!人のこと笑いやがって!!」
「アハハハハ…」
「宙太、最高におもしれ~」
「あのなあ!?」
宙太くんが遥奏くんに殴りかかろうとしたとき、ちょうどあの鬼教師が通りかかった。
彼が逃げ出そうとして、首根っこをつままれる。
「お前は昨日の!?」
「俺たち、超仲良しで、今じゃれ合ってたんです!」
「ふざけるな!!こっちに来い!!」
そのまま彼は連行されて行った。
反省文を書かされるに違いない。
なんか酷いことしちゃったかな…と一瞬思ったけど、すぐにその思いは蒸発し、自然と口元が緩んできた。
「アハハハハ!」
「アハハハハ!!」
私たちは同時に吹き出した。
「宙太、ざまあ見ろ!お前の分までオレが試合に出てモテモテになってやるよ!」
遥奏くんは青くて遙か彼方まで続いている海にそう叫んだ。
「午前中の分、ちゃんと取り返してね」
「分かった。だから、蒼井さん、ちゃんと見ててね」
私はドキッとして、一気に顔が硬直した。
不意打ち好きの彼に、また1本取られた。
「じゃあ、オレ練習してくる」
私に背を向け、駆け出す。
と思ったが、彼は振り返って、私の頬に手を伸ばし、思いっ切りつねった。
「痛いよ」
「蒼井さん、笑顔をお忘れなく」
そして今度こそ行ってしまった。
熱を帯びた頬に手をやる。
思い出すだけで胸がドキドキして、いつまでも鳴り止まない。
私、
私、
私、
遥奏くんに、
触られた…
良くわからない感情の渦が巻き起こって、ふわふわと浮いているような気分になった。
しかし、ふわふわしていたのもつかの間。
私が頬に手を当て、海を見ていると風の音とは明らかに違う何かを右耳がキャッチした。
「…」
何か言った?
誰が言った?
…空耳?
午後0時32分28秒。
笑う私を誰かが見ていた。
風は何も教えてくれない。



