いかだ造りは相当な体力が必要だった。
去年の体育祭以来運動をさぼり気味の私は、丸太を班員6人で運んでいたのにも関わらず、終始息切れを起こしていた。
そんな私を宙太くんが笑い者にして楽しみ、それをたしなめるように瑠衣ちゃんが彼に食ってかかった。
あの話を聞いてしまったせいで見ている私の方が辛い。
どちらも胸に爆弾を抱えて今後生活して行かなければならないのかと思うと、かさぶたが剥がれて再び血が出る時のような痛みを感じた。
私の心にかさぶたはきちんと張るだろうか。
止血するだろうか。
余計な荷物を背負ってしまった。
「ロープで縛り付けたら終わりだ!男共、最後の仕事にかかるぜ!」
宙太くんが2人に声をかけるも、朝が苦手な遥奏くんは意識がもうろうとしている感じで、今にも倒れ込みそうだった。
私は急いで駆け寄り、遥奏くんの隣に並んだ。
彼が私を見下ろし、その澄んだ瞳で見つめてくる。
心臓が今日も止まりかけた。
彼の瞳は凶器になりかねない。
厳重警戒せねば…。
私は動揺を必死に隠し、彼に視線をぶつけた。
「遥奏くん、今眠いでしょ?ムリしないで」
「あっ…、うん」
「午後からビーチバレーだよね?それで活躍してもらうってことで、今は免除。私が代わりにやるよ」
「でも…」
「大丈夫。私のことは心配しないで。ゆっくり休んでて下さい」
私は申し訳なさそうな態度の遥奏くんを半ば強制的にしゃがませ、宙太くんたちが汗水流す作業場に駆けていった。
「私、手伝うよ」
「遥奏、またサボリ?…ったく、アオハルに甘えすぎだっつうの!!もっとしっかりしろよ」
しょうがないことだと分かっている。
分かっているから、暗い話題を明るい方向に持って行こうとしてくれる。
それが宙太くんの優しさであり、遥奏くんを思う気持ちの強さだと勝手に想像している。
彼らは小学生の頃からの親友。
なんか色々あったみたいだけど、乗り越えて吸収して今に至っているらしい。
彼らの絆は目に見えない、本当に大切なものだ。
「アオハル、仕事さぼんなよ~」
「分かってるよ!」
宙太くんがロープを何重にもグルグル巻いてきっちりと結ぶ。
きっと強く強く、色々な思いを込めて結んだに違いない。
私はその思いの行く末を半分知ってしまっているけど、そのことは一旦忘れて彼の真剣な眼差しを見つめていた。
「よっしゃ出来た!後は浮かせるだけだ!」
完成はしたけれど、本当に浮くのだろうか。
宙太くんが召集をかけ、遥奏くんを除く班員でいかだをゆっくり滑らせて行く。
柔らかい砂の上に確かに跡を残してそのいかだは小さな波に乗った。
徐々に徐々に私たちの手が離れ、いかだだけが大海原へと進んで行く。
どうやら杞憂に終わったみたいだ。
「やったぜ!!」
「おう」
「浮いてる、浮いてる!早く乗ろう!」
いかだは意外にも安定していて、乗り心地も良かった。
探検に出かけた海賊のような勇敢な気持ちが体の底から沸々と湧いてきた。
潮風に吹かれ、波に揺られ、私たちはしばらくいかだの上で快適な時間を過ごした。
遥奏くんといつか一緒に乗りたいな…
安定したいかだはいつこぎ出せるのか。
私は我慢強く待ってみよう。
彼が大海原へと漕ぎ出せるその日まで。
だから、
だから、
だから、
だからそれまでは、
この気持ちよ、波立っていて。
私は海の上から彼を探していた。
去年の体育祭以来運動をさぼり気味の私は、丸太を班員6人で運んでいたのにも関わらず、終始息切れを起こしていた。
そんな私を宙太くんが笑い者にして楽しみ、それをたしなめるように瑠衣ちゃんが彼に食ってかかった。
あの話を聞いてしまったせいで見ている私の方が辛い。
どちらも胸に爆弾を抱えて今後生活して行かなければならないのかと思うと、かさぶたが剥がれて再び血が出る時のような痛みを感じた。
私の心にかさぶたはきちんと張るだろうか。
止血するだろうか。
余計な荷物を背負ってしまった。
「ロープで縛り付けたら終わりだ!男共、最後の仕事にかかるぜ!」
宙太くんが2人に声をかけるも、朝が苦手な遥奏くんは意識がもうろうとしている感じで、今にも倒れ込みそうだった。
私は急いで駆け寄り、遥奏くんの隣に並んだ。
彼が私を見下ろし、その澄んだ瞳で見つめてくる。
心臓が今日も止まりかけた。
彼の瞳は凶器になりかねない。
厳重警戒せねば…。
私は動揺を必死に隠し、彼に視線をぶつけた。
「遥奏くん、今眠いでしょ?ムリしないで」
「あっ…、うん」
「午後からビーチバレーだよね?それで活躍してもらうってことで、今は免除。私が代わりにやるよ」
「でも…」
「大丈夫。私のことは心配しないで。ゆっくり休んでて下さい」
私は申し訳なさそうな態度の遥奏くんを半ば強制的にしゃがませ、宙太くんたちが汗水流す作業場に駆けていった。
「私、手伝うよ」
「遥奏、またサボリ?…ったく、アオハルに甘えすぎだっつうの!!もっとしっかりしろよ」
しょうがないことだと分かっている。
分かっているから、暗い話題を明るい方向に持って行こうとしてくれる。
それが宙太くんの優しさであり、遥奏くんを思う気持ちの強さだと勝手に想像している。
彼らは小学生の頃からの親友。
なんか色々あったみたいだけど、乗り越えて吸収して今に至っているらしい。
彼らの絆は目に見えない、本当に大切なものだ。
「アオハル、仕事さぼんなよ~」
「分かってるよ!」
宙太くんがロープを何重にもグルグル巻いてきっちりと結ぶ。
きっと強く強く、色々な思いを込めて結んだに違いない。
私はその思いの行く末を半分知ってしまっているけど、そのことは一旦忘れて彼の真剣な眼差しを見つめていた。
「よっしゃ出来た!後は浮かせるだけだ!」
完成はしたけれど、本当に浮くのだろうか。
宙太くんが召集をかけ、遥奏くんを除く班員でいかだをゆっくり滑らせて行く。
柔らかい砂の上に確かに跡を残してそのいかだは小さな波に乗った。
徐々に徐々に私たちの手が離れ、いかだだけが大海原へと進んで行く。
どうやら杞憂に終わったみたいだ。
「やったぜ!!」
「おう」
「浮いてる、浮いてる!早く乗ろう!」
いかだは意外にも安定していて、乗り心地も良かった。
探検に出かけた海賊のような勇敢な気持ちが体の底から沸々と湧いてきた。
潮風に吹かれ、波に揺られ、私たちはしばらくいかだの上で快適な時間を過ごした。
遥奏くんといつか一緒に乗りたいな…
安定したいかだはいつこぎ出せるのか。
私は我慢強く待ってみよう。
彼が大海原へと漕ぎ出せるその日まで。
だから、
だから、
だから、
だからそれまでは、
この気持ちよ、波立っていて。
私は海の上から彼を探していた。



