朝ご飯を済ませて部屋に戻ると、奇妙なことが起こっていた。
あの賑やかな彼女が体育座りをして窓の外をじっと見つめていたのだ。
本人に聞いても良かったのだけれど、気軽に聞けるような雰囲気ではなかったため、部屋に先に戻っていた同室の女子にそのワケを聞いた。
「昨日のナイトハイキング中に告られたんだって」
「えっ…!?」
ナイトハイキング中に告られた?!
確か彼女のペアの男子って…
脳内の毛細血管をシグナルが駈け巡る。
そして、1つの答えにたどり着く。
「長内くんって瑠衣のこと好きだったんだね。てっきり晴香ちゃんのことが好きだと思ってた」
「いやいや、私は無いよ」
「わかってるよ~。それは今回の告白で明らかになったじゃん」
それにしても、だ。
理性より感性で動くような雰囲気と見た目ではあるが、名前の通り天文学をこよなく愛する理系の宙太くんが、まさか まさかこのタイミングで動くとは思ってもいなかった。
予想だにしなかった展開に私まで呆然となる。
彼女とようやく気持ちを通い合えそうなシチュエーションに出くわした。
「実はね、あの子、ああ見えても、ずーっと好きな幼なじみに告白出来ないでいるの。中学の頃からの付き合いだけど、瑠衣は一途だからさ、他の男子何人も振ってきたワケ。そのたんびにああやって考えに耽ってるの」
「そうなんだ…」
意外な一面に興味をそそられる。
宮部瑠衣ちゃんは明るくて活発でみんなの人気者で、私みたいな月人間とは違って、太陽のようにギラギラと周りを照りつけて、悩みなんて燃やして、すべて真っ黒の灰にしちゃっているのかと思っていたけれど、実際は本当にピュアで繊細なんだなと感じた。
人間見た目とは違う。
キャラを作って、仮面を被って必死にこの世の中を溺れないように泳いでいるんだ。
時に口をパクパクさせて息継ぎをしながら世の中と言う、限り無く広い海を自分のヒレを一生懸命動かして泳ぎ続けてる。
私たちは金魚なのかもしれない。
―――――いや、海に金魚はいないか。
だとしたら、私たちは一体何だろう?
前世は猿だと言われているけど、私には疑わしかった。
「付き合っちゃえばいいのに。だって、どうせ片思いなんだよ。瑠衣の好きな人には、これまた一途に思い続けてる人が居るの。幼なじみの瑠衣を差し置いてその子が好きとか言うんだから相当な愛だよ。勝ち目ゼロ」
自分のことじゃないのに、私の心までズタズタに切り裂かれた。
切なすぎて耳を塞ぎたくなってしまった。
人間関係は本当にうまく行かない。
複雑に絡み合ってピンと糸が張ることが無い。
そんなもんだと思えたら楽だけど、それが出来ないから煩悶するんだ。
「千郷、余計なことしゃべんないでよ~。これから晴香ちゃんと仲良くなるつもりなのに、引かれちゃうじゃん!」
その笑顔もムリに作った営業スマイルか…。
私は彼女を真っ直ぐに見ることが出来なかった。
「そうだ、そうだ!今日のいかだ造り、がんばろうね!あたしのパパの実家が海の近くでさあ、おじいちゃんとよく作ってたんだよね~。それでね…」
彼女が必死に話しかけてくるが右から左へスポーンと抜けて言ってしまう。
日本語をしゃべっているはずなのに、外国語に聞こえた。
私は彼女の影を知ってしまった。
そして、ずっと笑顔でいて欲しいと願う彼の顔が涙で濡れてグシャグシャになるのかと思うと、益々心に陰気が溜まった。
重くなった心を抱えた私は海でプカプカと浮いていられるのだろうか。
海の底に沈んでしまうのではないか。
午前9時2分17秒。
風の行方は誰にもわからない。
あの賑やかな彼女が体育座りをして窓の外をじっと見つめていたのだ。
本人に聞いても良かったのだけれど、気軽に聞けるような雰囲気ではなかったため、部屋に先に戻っていた同室の女子にそのワケを聞いた。
「昨日のナイトハイキング中に告られたんだって」
「えっ…!?」
ナイトハイキング中に告られた?!
確か彼女のペアの男子って…
脳内の毛細血管をシグナルが駈け巡る。
そして、1つの答えにたどり着く。
「長内くんって瑠衣のこと好きだったんだね。てっきり晴香ちゃんのことが好きだと思ってた」
「いやいや、私は無いよ」
「わかってるよ~。それは今回の告白で明らかになったじゃん」
それにしても、だ。
理性より感性で動くような雰囲気と見た目ではあるが、名前の通り天文学をこよなく愛する理系の宙太くんが、まさか まさかこのタイミングで動くとは思ってもいなかった。
予想だにしなかった展開に私まで呆然となる。
彼女とようやく気持ちを通い合えそうなシチュエーションに出くわした。
「実はね、あの子、ああ見えても、ずーっと好きな幼なじみに告白出来ないでいるの。中学の頃からの付き合いだけど、瑠衣は一途だからさ、他の男子何人も振ってきたワケ。そのたんびにああやって考えに耽ってるの」
「そうなんだ…」
意外な一面に興味をそそられる。
宮部瑠衣ちゃんは明るくて活発でみんなの人気者で、私みたいな月人間とは違って、太陽のようにギラギラと周りを照りつけて、悩みなんて燃やして、すべて真っ黒の灰にしちゃっているのかと思っていたけれど、実際は本当にピュアで繊細なんだなと感じた。
人間見た目とは違う。
キャラを作って、仮面を被って必死にこの世の中を溺れないように泳いでいるんだ。
時に口をパクパクさせて息継ぎをしながら世の中と言う、限り無く広い海を自分のヒレを一生懸命動かして泳ぎ続けてる。
私たちは金魚なのかもしれない。
―――――いや、海に金魚はいないか。
だとしたら、私たちは一体何だろう?
前世は猿だと言われているけど、私には疑わしかった。
「付き合っちゃえばいいのに。だって、どうせ片思いなんだよ。瑠衣の好きな人には、これまた一途に思い続けてる人が居るの。幼なじみの瑠衣を差し置いてその子が好きとか言うんだから相当な愛だよ。勝ち目ゼロ」
自分のことじゃないのに、私の心までズタズタに切り裂かれた。
切なすぎて耳を塞ぎたくなってしまった。
人間関係は本当にうまく行かない。
複雑に絡み合ってピンと糸が張ることが無い。
そんなもんだと思えたら楽だけど、それが出来ないから煩悶するんだ。
「千郷、余計なことしゃべんないでよ~。これから晴香ちゃんと仲良くなるつもりなのに、引かれちゃうじゃん!」
その笑顔もムリに作った営業スマイルか…。
私は彼女を真っ直ぐに見ることが出来なかった。
「そうだ、そうだ!今日のいかだ造り、がんばろうね!あたしのパパの実家が海の近くでさあ、おじいちゃんとよく作ってたんだよね~。それでね…」
彼女が必死に話しかけてくるが右から左へスポーンと抜けて言ってしまう。
日本語をしゃべっているはずなのに、外国語に聞こえた。
私は彼女の影を知ってしまった。
そして、ずっと笑顔でいて欲しいと願う彼の顔が涙で濡れてグシャグシャになるのかと思うと、益々心に陰気が溜まった。
重くなった心を抱えた私は海でプカプカと浮いていられるのだろうか。
海の底に沈んでしまうのではないか。
午前9時2分17秒。
風の行方は誰にもわからない。



