HARUKA~恋~

「何かあったらすぐ言って。オレがなんとかするから」


男前の発言に私はコクリと頷いた。
そしてそのまま、視線は自ずと下に…。
真っ直ぐも、顔を見ることもできない。
ただしっとりと濡れた地面を見つめていた。


「んじゃあ、次は阿部と蒼井だな。気をつけて行って来いよ~」


岡安先生に促され、私たちは夜の森に足を踏み入れた。



   




都会と違って人工的な光が一切無いから辺りは真っ暗。
遥奏くんの右手の懐中電灯だけが夜道を照らす。


お互いに歩調を合わせながら、言葉を交わすことなくどんどん先に進んで行く。

昼間通った道とは別のルートを進んでいるため本当にこの道を歩み続けて良いのか不安になる。


聞こえてくるのは風の音と遥奏くんの息づかいだけ。

たまに風が強く吹いて大きなうなり声をあげる。

それに少し怖がっていると、遥奏くんが私の方に顔を向け、にっこり微笑んでくれる。
向日葵と言うよりはたんぽぽのような、控え目だけど確かに人を元気付ける笑顔だ。

私は彼のそんな笑顔に胸がきゅうっと締め付けられた。