「どうだ?」

「昨日と同じだった。彼女の服装も表情も、1周して戻ってきたゴンドラに乗っていなかったことも」

「そうか」

「でも、幽霊とかと違うような気がする。俺はそういうのを今まで見たことがないけれど、きっと本当にそういうものだったら、もっと何か恐怖感とかってありそうな気がするんだけど。それが全然感じられないんだ」

「お前、その彼女に見覚えはあるか?」

「いや、ない・・・と思う」

 なぜか断言できない。

 見覚えはないはずなのだ。

「まぁ、今晩はゆっくり休めよ」



 ここはどこだろう。

 気が付くと、見知らぬ場所に立っていた。

「ここからの景色が一番好き」

 隣から声が聞こえるのに、そちらに向くことができない。

「ずっと、一緒に見たかったなぁ」

 呟く声に何かを返そうとするけれど、声が出ない。

「もうすぐ、さよならだね」

「待って!」

 叫んだ自分の声で目を覚ました。

 時計を見ると真夜中の2時だ。

 何の夢を見ていたのだろう。

 目を覚ます直前まで、覚えていたのに。

 キッチンに行き、冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出して、一口飲んだ。

 その冷たさが、のどに気持ちよかった。