「昨日までは、そんなことなかったんだぜ。それなのになぁ」

「俺に聞かれても困るよ」

 今まで、幽霊を見たことがあるわけはない。

 でも、この同僚には彼女の姿は見えていなかった。

 昨日までも彼女はここに来ていたのだろうか。

 ただ、姿が見えていなかっただけで。

「1週間、待ってみるか?」

「え?」

「お前が体験したのが、彼と同じことなら、1週間がその・・・幽霊というのかな、その彼女が消える目安みたいだろう?」

「1週間続いたら、俺にも同じ行動をとれというのか?」

「まぁ、今の所は別に他のお客さんに迷惑を掛けているわけでもないしな」

「俺のこのバイトもあと1週間で終わりだし、考えてみるよ」



 そうして。

 次の日も彼女は同じ時間に現れた。

 昨日と同じ白いワンピースに、下ろした髪。

 浮かぶ表情も昨日と変わらない。

「どうぞ」

 ゴンドラの扉を開けて、彼女が乗り込むのを確認して、扉を閉めた。

 上がっていくゴンドラを見上げる。

 一周して戻ってきたゴンドラにやはり、彼女はいなかった・・・。