着替えを済ませて、遊園地を後にした。

「それで?」

 そのまま連れてこられたファミリーレストラン。

「実はな、お前みたいなことを経験したやつが他にもいてさ。昨年だったかなぁ・・・」

 その同僚の話はこうだった。

 ある日の閉園前のこと。

 いつものように最後のお客さんをゴンドラへと案内した。

 そこへ1人の少女が駆け込んできた。

 肩までのウエーブの髪。

 本当は多少時間を過ぎていたのだが、追い返すこともできずにゴンドラにその少女を乗せた。

 1周して戻ってきたゴンドラには誰も乗っていなかった。

 その時に一緒にいた同僚にはその少女は見えてなかったという。



 その出来事は、そのあと1週間続いた。

 7日目、彼はついに行動に出た。

「僕をゴンドラに乗せてくれませんか?」

 同僚も普段はこんなことを許すはずもなかったが、その時のその彼があまりにも真剣な顔で頼んでくるので、断れなかったらしい。

「いいよ。特別だからな」

 彼は1人、ゴンドラに乗って、地上を上がっていった。

 そして。一周して戻ってきたゴンドラを降りた彼は言った。

「彼女はもう、ここに現れることはないよ」

 

 それ以来、ずっとそんな出来事は起きていないとのことだった。