観覧車のモノローグ

 覚えている。

 忘れるはずもない。

「驚いているの?そうだよね。この姿はあのときのままだものね」

 そう、付き合っていたあのときの姿のまま。

「これはあなたの中のわたしの姿だから、気づいてくれたんだよね」

 目の前の彼女は姿を変えていく。

 どうして、気づかなかったんだろう。

 どうして、忘れていたんだろう。

 彼女のことを。

「今晩、また会えるよね」

 じゃあ、と手を振って、彼女は消えていった。



 目が覚めた。

 覚えている夢。

 あれは彼女だった。

 何で今まで、忘れていたんだろう。

 大切なことを何で、忘れていたんだろう。

 夜の観覧車。

 彼女が来ていた白いワンピース。

 すべてのヒントがあそこにはあったのに。

 あれは、最後のデートだった。

 そして、あの日から彼女は自分の前から姿を消した。

 その事実に目を背けていた。

 ずっと。

 認めたくなかった。