「紛らわしいことしてんじゃねぇ」

「え、ならほんとにやってよかった?」

「殺すぞ」

物騒な気配を漂わせる季龍さんに、信洋さんはすぐに降参と白旗をあげる。

「まぁま、若も機嫌直せ?お嬢も琴音もかわいそうだろ」

「…」

「そんなに琴音が大事なら、取られねぇようにちゃーんと腕の中にしまっとけ。まぁ、その前に琴音から好かれることだ」

「え、若ここちゃんの了承とってないの?」

信洋さんの言葉に、平沢さんは怪訝な顔をする。

でも、平沢さんがなにかを言う前に季龍さんに引っ張られて駐車場の方へ向かう。

「おい若!」

「あーあ、ありゃ若が暴走してんな」

後ろから声が聞こえて来たような気がしたけど、季龍さんの足を進めるスピードが速くてついていくのに必死になる。

車の中に押し込められるように乗ると、季龍さんが隣に乗り込んでくる。

すぐに梨々香ちゃんと暁くんが乗ってきて、車は動き出した。