「季龍…さん?」

「あぁ」

「っ季龍さん!」

しがみついてきた琴音が落ち着くように頭を撫でる。

暗がりで布団に押し倒されたのがトリガーだったのか…。震えが止まらない体は、傷つけられたことをはっきり覚えてるのは明らかだ。

「琴音、悪かった」

「フルフル」

何とか落ち着いたか?それでも表情は固いし、体は震えたまま。

たった一度。それでも、その一度がこいつの全てを壊した。

許せねぇ。こいつを傷つけた奴も、傷つけておきながらもこいつの心を支配する奴も…。

「忘れちまえ」

「…?」

「全部忘れて…いや、塗り替えてやる。俺が、全部な」

「…??」

…ポカンとした顔で首をかしげる琴音に、頭を抱えたくなるのをこらえ、ため息をつく。

こいつ、口説いてんだぞこっちは…。バカみてぇだろうが、くっそ…。