「お兄ちゃん来たでしょ!」

「梨々香ちゃんの勝ちだね」

「あ、ことねぇ!何でも言うこと聞いてくれるんだよね!」

目を輝かせた梨々香ちゃんに嫌な予感がよぎりつつも苦笑いで押し留めて頷く。

そう言えば、そんな賭けしてたんだった…。

まさか来るなんて思っていなかったから安易に了承したものの、軽率だったと後悔することしかできない。

「やった!じゃあ、今日はお兄ちゃんの言うことぜーんぶ聞いてあげて!」

「え…?」

梨々香ちゃんの言葉に耳を疑う。

梨々香ちゃんのお願いじゃなくて、季龍さんの…?どういうこと?

わけわからず首をかしげると、梨々香ちゃんは心外だと言わんばかりの顔をしてしまう。

「お兄ちゃんが雪の中、無理してでも来たのはことねぇに会いたくてしょうがなかったからなんだから!」

「へ?…梨々香ちゃん!?」

どうしたらそういう解釈になるの!?

だって、一刻も早く来てくれたのは、終わったことを梨々香ちゃんや源之助さんに伝えるためで、私なんかただの使用人なのに…。