「なんだ?ケンカか?」

「…暁くんの、お姉さんの、話…してくれて」

「え?…そうか、暁が姉貴のことを…」

平沢さんはすっかり酔いが覚めてしまったようで、神妙な顔で暁くんが去っていった方向を見つめていた。

「暁が自分から姉のこと話すなんてな…。琴音、お前はなんか人の心を開く力があるみたいだな」

「…フルフル」

「そんな否定するな。暁だけじゃない、お嬢やあの若も、親父もお前のこと信頼して話したんだよ」

頭を撫でられながら、考えているのは暁くんのこと。

また仲直りできるかな…。一方的に話されて、それで終わりでもよかったのかもしれない。でも、自分を責め続ける暁くんを見ていられなかった。

自分を追い込んだ先にあるのは、ただの孤独と我慢の限界が分からなくなってしまう危険しかないから…。

平沢さんに立ち上がらせてもらい、もう寝ろと部屋に返されてしまった。