全速力で車を走らせ病院に向かったけど、平日の帰宅ラッシュのことをすっかり失念していたせいで、面会時間を10分くらい過ぎていた。

一発くらいもらうかもしれない。

そんな恐怖と戦いつつ病院のエントランスに足を踏み入れると、そこには予想に反して静かに若はそこにいた。それが逆に恐ろしくて恐る恐る近づいたのは許して欲しい。

「えっと、若…?」

「信洋、今すぐ屋敷に延命装置一式そろえろ」

「え?…それは、どういう」

「病院側が警察に通報する気だ。今夜、琴音を連れ去る」

若の言葉に思わずぞっとする。

それは確かに決行しなければここちゃんは俺たちの手の届かないところへ連れて行かれてしまう。そうなればここちゃんを守ることは不可能。

だけど、未だ人工呼吸器を外せないここちゃんを病院から連れ出すと言うことは、想像以上にリスクが高い。

でも、このままここちゃんを手放せばきっとすぐに殺されるか敵の手の内で一生を強いられる。

なら、俺たちがとる手段は1つしかない。

「分かった。すぐ準備する」

若とお嬢を連れ、一旦屋敷に戻る。そして出来る限りの準備を整えた。

信洋side end