信洋side

いきなり吹いてきた風に危うく足をとられかけた。それを何とか踏ん張ってこらえ、見えてきた焼け野原に近づいていく。

…ここちゃんが一般病棟に移ってから1週間。

容態は徐々に安定を見せて、人工呼吸器は機械による呼吸管理から、自発呼吸の補助に切り替えられた。

若は毎日欠かすことなくここちゃんを見舞っていて、その真摯さにバカにすることも出来なかった。

でも、余裕が出来たからか、ずっとモヤモヤしていた原因がここちゃんを襲った銃弾であることに気づいた。

今日ここに来た目的は、その違和感を確かめるため。

若に相談すべきなのは分かってる。

でも、今は1秒でも長くここちゃんの傍にいてやってほしいというのは俺のエゴかな…?

だから、だからこそ。俺は1人あの忌ま忌ましい事件の現場にいた。

1か月以上たったそこは、あの時の状態を色濃く残したままだった。黒く焼け焦げた建物の残骸に薄く雪が積もっていた。

足を止めたのは、ここちゃんが撃たれた場所。とっくにないはずの血の跡が目の裏に鮮明に蘇る。

その残像を振り払うように頭を振り、ここちゃんを撃った奴がいた方向へ視線を向ける。