「なに考えてやがる」

「…いえ、医者の…いや、個人的な勘ですよ」

一瞬、険しい視線を廊下に投げた名蔵は次の瞬間何事もなかったように無表情を貫いた。

「では、何かあったらナースコールを押してください」

足早に病室を後にした名蔵の背を睨み付ける。

何か隠してやがる…それも、嫌な感じがする。

何が起ころうとしてる…?何がくる?

カーテンが開け放たれている窓を見る。その先には反対側の病棟が見える。

「…」

「え、お兄ちゃん閉めちゃうの?」

開け放たれたカーテンを閉める。すると、ざわつきが少し和らいだ。…“視線”か?

確信はない。でも、それがたぶん、原因らしい。

結局その日はなにも起こらないまま、目を覚まさない琴音を病院に残し、屋敷に戻った。

季龍side end