―1か月後

病院へと走る車の中には、平沢、信洋といつもの2人と、梨々香が乗っていた。

梨々香は落ち着きなく外の風景を見つめ、手にした花を何度も握り直している。

「梨々香、花がダメになるぞ」

「う、うん」

とか言いながら、花を握る手の力は抜けないらしい。

屋敷を出る前まではあんなに楽しそうにしていたのに、いざとなると緊張するらしい。

…いや、俺も人のことは言えねぇな。

「お嬢、そんなに緊張しなくても大丈夫だよ」

「ッなんで信洋はそんなに普通なのよ!」

「え?…なんでだろうねぇ」

苦笑いを浮かべる信洋に梨々香は当てにならないと言わんばかりにため息をつく。

向かっている先は病院。昨日までは信洋と俺か、平沢が同行するかしないかの日々だった。

しかし、集中治療室を出た昨日、いつもなら何も言わない名蔵が口を開いた。