痛がりながら信洋が車に乗り込んでくる。すぐに動き出した車。

信洋が振り返ってきて、さっきの話の続きを始める。

「関係ないってどういうこと?」

「そのままだろ」

「ッまさか、ここちゃんを捨てる気っだ!!?」

 冗談でも許せねぇ言葉を吐きやがった信洋を座席越しに蹴る。こいつ、マジでふざけんじゃねぇ。

「琴音が寝たきりになったとしても、俺があいつを捨てるわけねぇだろうが」

「…はは、確かに、当たり前だった」

「分かったらふざけたこと言ってんじゃねぇ」

「へいへい。あ~あ、今のここちゃんに聞かせてやりてぇなぁ。きっと、顔真っ赤にするよ?若もそう思わない?」

…想像しかけてやめる。直接言えるわけねぇだろ。

そんな、プロポーズみたいな言葉…。

顔が熱くなるのに気付いて誤魔化すように外を見る。

いつか、いつか前までの日常が戻るように。

琴音が今度こそ安心してここにいられるように、俺は強くならないといけない。そのためには…。

先ほどから口1つ開かない平沢に視線を向ける。

まずは、こいつに認められなければならない。そのために、俺が出来ることは…。

これからのことに頭を巡らせ、流れゆく景色を見つめ続けた。