「親父」

「ん?」

「…すみませんでした。もう、琴葉の前でだらしねぇことはしねぇ」

「…あぁ。決めたならそれでいい。…季龍、強くなるんだぞ」

「あぁ」

季龍は立ち上がり、部屋を後にする。その後ろに信洋が続く。

その背に迷いはもうなかった。

振り返ることなく部屋を出て行った季龍の背を見つめていた源之助は、深く息を吐き出す。

視線を移した先にあるのは白い薔薇。彼女が愛した花。季龍の隣に立つ子の名を持つ花。

「…琴葉ちゃん、どうか生きて戻って来るんだよ」

彼女は光だ。

この組に明るさを、笑顔を運ぶ光。そして、季龍の未来を照らす、最後の希望…。

源之助は自身の痩せこけた手を見つめる。肉が落ち、まるで骨が皮を被っているだけのような手を。

「この老いぼれの最期の希望を、どうか叶えてくれ」

客観視end