自身のふが無さに、甘さに打ちのめされている息子に源之助は悲しげに目を細める。

だがそれをひた隠し、源之助は顔を上げる。

「季龍、お前はしばらく琴葉ちゃんを大事にしてやりなさい」

「…琴葉は、まだ集中治療室に」

「分かっている。…季龍、お前のその命を守ったのは琴葉ちゃんだ。そして、お前が先ほど消そうとした中野蓮美の命も、今も懸命に生きようとしている琴葉ちゃんの命も、同じ命だ」

源之助の言葉に季龍はわずかに顔を上げる。まるで幼子だ。自身の歩く道を知らぬ、いいや、歩き方さえも知らない赤子も同然。

だからこそ、まだ道は照らせる。

「琴葉ちゃんは生きてるんだ。お前が折れるのはまだ早いだろう。…それに、必死に命を繋ごうとしている琴葉ちゃんへの贖いに他者の命であっても簡単に切り捨てるようなことは言うんじゃない」

季龍は目を見開くと、自身の口を手で覆い隠す。それは、死を簡単に口にした自身への恥。

源之助が安堵する前で、季龍は顔を上げる。

その瞳は強さを、守る決意に満ちた、永塚組にきたばかりの季龍の瞳と同じ。