「どーした、若」

「荷物ならまとまってますよ」

「琴音に面会できるらしい」

「へ?」

間の抜けた顔をする信洋は徐々に理解したらしいものの、唖然した顔は変わらなかった。

「若、行ってこい。どうせ5分とかだろう」

信洋より先に口を開いた平沢の言葉に自分でも戸惑ったのが分かる。

俺たちを動揺させないために冷静な役回りを持った平沢だが、琴音のことを心配している気持ちは何ら変わらないはず。

なのに、会える機会をみすみす手放すのか…?

「若、ちゃんと琴音のこと見てきてください。…琴音にとって、若は大切な人なんですよ。守られたあんたが無事だってことを、琴音に見せてきてやってくれ」

平沢の言葉に考えていたことが吹き飛んでいく。

琴音に守られた。俺が守ると誓ったはずなのに、守られたのは、やはり俺だったんだ…。