「でもな、琴音は死ぬと決まった訳じゃない。今だって懸命に生きてんだろ。…もし、琴音が目覚めたとき俺たちがボロボロで琴音を安心してやれんのか?」

「…それ、は……」

「悲しむことなんかいつでもできる。今は琴音が目覚めたとき俺たちが万全でいること。それが1番じゃないか?」

目の前に差し出されたコーヒー。

平沢は表情を変えなかった。

…俺よりもずっと、ずっと琴音を信じてる。なんとか受け取ったコーヒーがやけに重い。

梨々香も、信洋も、平沢から受け取った飲み物をじっと見つめている。

琴音が目覚めたとき、万全でいること…か。

確かに、俺たちが崩れたら琴音が安心できるわけ、ない。

琴音は生きてる。信じろ。あいつを。

『…お前は必ず守る。…だから、傍にいろ』

『…季龍さんの傍にいます。…あなたがそれを望む限り、ずっと』

約束した。傍にいると。

俺が望めば琴音は離れない。

なぁ、そうだろ?…琴葉。