指揮を執っていた平沢でさえも、崩れ落ちた屋敷に視線を奪われていた。

不意に乾いた音と何かが倒れたような音が平沢の耳を掠める。不思議と動かなかった体が音に導かれるように動く。

そして、振り返った先にあった光景に言葉を失った。

倒れていたのは、娘のように可愛がり、若頭が惚れた少女。たった今救い出したはずの、琴音だった。

そして、その琴音を中心にじわじわと赤い何かが広がっていく。

「…こと、ね……?」

何が起こったのか。理解が追い付かない。それは、琴音の目の前にいる季龍も同じ。

たった今自分の目の前にいたはず。目の前で笑っていたはずなのに。

どうして、季龍の背後で胸から血を流して倒れているのか…。

どうして、どうして、どうして…。

不意に目を見開く。勝手に口が動く。

止まっていた時が一斉に動き出す。

客観視 end