―客観視―

怪我人が一塊になっているすぐ隣で、声を張り上げ水を運ぶ男たちが行き交う。

屋敷を包んだ炎は勢いを止めることを知らず、天を焦がすかのように勢いよく燃え続ける。

そんな喧騒から少し離れたところで座り込む季龍には、そんな外の音など聞こえていないようだった。

ただ1人、意識を向け続ける少女のこと以外などなにも見えていないように。

目を覚ました琴音が微笑んだように見えた顔に、安堵しきっていた。

不意に、1人の人影が揺らぐ。忙しく動き回る男たちは、その男への注意をすっかり失っていた。

男が手にしたのは鈍く光る拳銃その銃口を徐々に上げていく。

男の変化に誰も気づかない。誰も、誰も…。

「ッ逃げろ!!」

不意に誰がが叫んだ。

その瞬間、ついに崩壊の音が響き渡った。

誰もが足を止めて呆然と屋敷だったものを見つめる。崩れ落ちてもなお燃え続けるその光景を見つめ続けていた。