情けねぇ。…本当に、情けねぇな。

ため息をつく。眠ったままの琴音の顔を見つめる。


今だけ、今だけでいい。

だから、少しだけ休んでもいいか…?


琴音の髪を撫でる。火にやられたのか、チリヂリになったり、一部焼け落ちたような跡もある。

ぼんやりした意識で琴音を見つめていると、不意に瞼が震える。そして、ゆっくりと目を覚ました琴音はふらふらと視線を迷わせたあと、視線が重なった。

「“季龍さん”」

声は聞こえなかった。それでも、呼ばれたのは分かった。

琴音の表情が緩む。緩んだだけなのに、少しだけ笑っているように見えた顔に息がつまる。

あんな思いをしたのに、まだ俺に笑ってくれるのか…?

琴音の頬に手を添える。

その顔をもっと近くで見たい…。自然と琴音の体を起こすと、琴音も応えるように起き上がる。

向かい合って座り込むと、琴音は手を伸ばしてくる。その手をとろうと手を伸ばしたとき、琴音は不意に目を見開いた。

季龍side end