「仕方ねぇ。予定変更だ」

「…」

胸ポケットから出したのは銀色のケース。

それが嫌なものであることなんか、一瞬で分かる。でも、逃げる術なんか持っているはずもなくて、ただ迫るそれを見つめることしか出来なかった。

「狂え。壊れて、奴を絶望させろ」

銀色のケースから出てきた注射器はそこまで大きさはない。

でも、嫌な予感だけはずっとしていて。

腕に突き刺さったそれの中身が全て消える。

「…」

「…」

…何も、感じない。変な高揚感も、熱も何も感じない。

でも、次の瞬間心臓が高鳴る。息が詰まる。視界が歪む。

「あ…あ、ぁ…」

気持ち悪い感覚が体を襲う。まるで、身体中を引っ掻き回されてるみたいだ。

顔をあげる。そこにあったのは黒い塊。それが迫ってきた瞬間、落ちた。