でも、冷静になってくると全く別の顔に見えてくる。

奏多さん、捕まってたんだ…。そして、奏多さんを、私を拐ったこの人は…。

「さっきはごめんね?でもこっちも命がけなんで、逃がせないけどさ」

「…誰、ですか」

「ん?あぁ、言ってなかったか。南 奏多の双子の弟の奏太(そうた)です」

「双子…」

「一卵性のね。てか、お姫様見分けついてるんでしょ?さっきはビビった」

律儀に自己紹介までしてくれた奏太さんは、こうしてみると悪い人になんて見えなかった。

それもそうだろう。雰囲気まで奏多さんに似てる。そんな人を悪い人なんて思えなかった。

「まぁ、一応お姫様も、おまけで兄貴も人質です。とは言っても、ちょーっと縛らせてもらってるだけで、俺たちからは危害を加える気はありません」

「…季龍さん、たちが、要求を、飲まなかったら?」

「いい質問だね。ただ、飲まないなんてあり得ないから、考えてません。…でもまぁ、要らなくなった人質の行き先がろくでもないことくらい分かるよね?」

意地悪に笑った顔は、悪気なんて全く感じていなかった。