「…まず、2人の安全が最優先。若、いいよね」

「当たり前だ。奴らの交渉には従うしかねぇ」

「親父さんの首って言われたらどうする」

一瞬で空気が凍りつく。

最も最悪な取り引き条件だ。組長の首が飛ぶなど、あってはならない。そんなことをすれば、親父の命はもちろん、永塚組まで奴らの手に落ちる。

「構わん。応じろ」

「親父!?」

「正気なんて言いませんよね!?」

一切迷いのない親父の一言に幹部たちが声をあげる。だが、ひと睨みでそれを黙らせた親父は、傍に控える田部を見る。

「もしもの時は田部、季龍につけ」

「…承知しました」

「田部さん!あんたまで!!」

「琴葉はわしの恩人だ!!死なせるわけにはいかん!!」

声を上げた幹部を押さえるように発した親父の声に、誰もが言葉を失った。