「でも、本当に逃げ出していたらどうしたんですか」

誰かの声に我にかえる。

仮に、もし仮にその脅しが嘘だと琴音が分かっていて、逃げ出したその時は。

「総出で探す。それ以外に方法なんかねぇだろ」

俺の言葉に目を見開いたそいつは、頭をかいて視線をそらす。

「まぁ、俺としては渡したケータイくらいは付けたかったけど、若に却下された。だから、ここちゃんに首輪なんかついてないんだよ」

今度こそ沈黙が落ちる。

探す手段など皆無に等しい。

分かっているのは、敵が奏多と瓜2つの男であることと、琴音がさらわれたのが黒のワゴンということだけだ。

と思い返してはっとする。

「おい!奏多は!?」

「え、昼になんか慌てて飛び出していきましたけど…」

「連絡取れ!」

「はい!!」

嫌な予感がする。決して外れることがないと分かっているそれは、電話を手にした奴の顔を見れば確信に変わる。

「…出ません」

「捕まってると見て間違いだろう。…人質が2人か」

平沢の言葉が、希望論を言いかけた奴らを黙らせる。