季龍さんは無理するなと言うけど、特に無理してるつもりもなくてよくわからない。
あ、そういえばさっきのカップ見たいんだった。季龍さんに離してもらってその場にしゃがんでカップに手を伸ばす。
ファンシーな絵柄のサンタさんとトナカイが描かれたマグカップ。ペン立てとかにしてもかわいいだろうな…。
「ここちゃん、それ買ったげる」
「っ!?」
「気に入ったんでしょ?他も欲しいのあったら買いな」
「フルフル」
「遠慮すんな。お父さんが買ってやる」
平沢さんまで…。
確かにかわいいとは思ったけど買うつもりはないのに…。
マグカップを棚に戻そうとすると、横から伸びた手にマグカップは拐われる。いつの間にか暁くんが持っていたかごの中に入れられてしまった。
「100円なんだし、気にせず好きなの買いなよ。ここちゃん消しゴムやノートも使い切ろうとしてるでしょ」
とか言いながら私の背を押していく信洋さんに連れられるまま、文房具売り場の前で止まる。
「ほら、どれがなくなりそう?」
「…」
「…選ばないなら、全部1個ずつ買うけど」
「っ!?」
考え方極端です!?ほら早くと頭を撫でられ、おずおずと手を伸ばす。
マーカーとボールペン、シャープの芯を手に取ると、まとめてかごの中に入れられた。


