私のご主人様Ⅳ


「え?」

間抜けな声が聞こえてくる。恐る恐る目を開けると、恐ろしい顔をした季龍さんがいて、思わず固まる。

季龍さんの視線は私ではなく、背後に向けられていた。

「失せろ」

「っひぃ!?」

「ま、待てよ!」

ドタバタと騒がしい音。振り返ると、我先にと店から飛び出していく2人組が見えた。

他のお客さんは驚いて2人組に道を開ける。

少し時間が止まったようになったけど、何事もなかったように再び動き出す。

その様子を見ていると、頭を撫でられて顔を上げる。

「大丈夫か」

「ッコク」

「ここちゃんやるぅ~」

冷やかすような声に顔を向けると、ニヤニヤ顔の信洋さんと、平沢さん、呆れた顔の暁くんがいた。

見られてた?季龍さんに視線を戻すと、複雑そうな顔をしていた。

「若が助けに行こうとするのに全部片付けちゃうんだもんな」

「娘が強くて俺は安心だ」

「若が暴れなくて俺も安心だー」

誉められてるのか、からかわれてるのかよくわからない…。