「え?」
間抜けな声が聞こえてくる。恐る恐る目を開けると、恐ろしい顔をした季龍さんがいて、思わず固まる。
季龍さんの視線は私ではなく、背後に向けられていた。
「失せろ」
「っひぃ!?」
「ま、待てよ!」
ドタバタと騒がしい音。振り返ると、我先にと店から飛び出していく2人組が見えた。
他のお客さんは驚いて2人組に道を開ける。
少し時間が止まったようになったけど、何事もなかったように再び動き出す。
その様子を見ていると、頭を撫でられて顔を上げる。
「大丈夫か」
「ッコク」
「ここちゃんやるぅ~」
冷やかすような声に顔を向けると、ニヤニヤ顔の信洋さんと、平沢さん、呆れた顔の暁くんがいた。
見られてた?季龍さんに視線を戻すと、複雑そうな顔をしていた。
「若が助けに行こうとするのに全部片付けちゃうんだもんな」
「娘が強くて俺は安心だ」
「若が暴れなくて俺も安心だー」
誉められてるのか、からかわれてるのかよくわからない…。


