「奏多さんは…?」

「急用だってよ。お前ちゃんと髪乾かせ。風邪引くだろうが」

タオルで拭いただけの髪に気づいた暁くんはため息をついて私の髪に触れる。

大丈夫と言っても聞いてくれなくて、急いでドライヤーで乾かして戻ると梨々香ちゃんと青海さんの姿もあった。

「ことねぇ!飾りつけの買いに行こう!」

「お嬢、琴音は外に出せない」

「ケチ!ちょっとくらい、いいじゃない!!」

抱きついてきた梨々香ちゃんは頬を膨らませてしまう。それでも表情1つ変えない青海さんはダメの一点張りで、折れる様子は皆無だ。

それでも簡単には屈しない梨々香ちゃんと青海さんのバトルは続く中、騒ぎに気づいたのか季龍さんが顔を出した。

「何やってんだ」

「お兄ちゃん!ねぇ、ことねぇとクリスマスツリーの飾り買いに行きたい!!」

「は?…ダメだ。琴音は出さねぇ」

「たまにはいいじゃん!お兄ちゃんも来てよ!!それならいいでしょ?」

いつもなら季龍さんに言われたら素直に従う梨々香ちゃんだけど、今日はへこたれなかった。

季龍さんは困ったような顔をして、梨々香ちゃんを見つめ返していて、返す言葉を悩んでいるようだった。