「琴音!」

「なにもされてない!?」

背後から来た暁くんと奏多さんに保護されるように高崎さんとの距離を離される。

でも、高崎さんから向けられる視線ははっきりと感じた。

「暁、琴音ちゃんと部屋戻ってて」

「奏多さんは…」

「俺はちゃんと教育してから戻る。琴音ちゃん、ごめんねなにも聞かないで待っててくれる?」

私に向ける視線こそ優しいけど、高崎さんを見る奏多さんはまるで知らない人のような目をしていた。

暁くんに引っ張られその場を離れる。少しだけ振り返ると、高崎さんを取り囲むように立つ奏多さんたちが見える。

その姿に優しさなんか欠片もない。

あの目を向けられていたかもしれない。あの立場が私だったかもしれない。

ここは、そういう場所。

そんなこと、分かってるのに、あんな顔見たくなかった…。