伸ばした手を引っ込めて背を向ける。

台所に向かって足を進めようとしたその時、背後でドアが開け放たれた音に驚いて振り返った。

その瞬間、今まさに洗濯場から飛び出してきたその人と視線が重なる。

記憶にあるより少しやつれた顔。そして、ろくに身だしなみを整えてなさそうな格好は、学校で見せていた可愛らしい彼女の姿をぼかしてしまう。

私を見た瞬間、見開かれたその目に自分の姿が映る。

互いに見つめ合って固まっていた。

どうして、ここにいる。互いに思うことも恐らく同じだったはず。

でも、どうして彼女が、高崎詩音がここにいるのか、分からなかった。

でも、次の瞬間高崎さんの目に宿ったのは憎悪で、一瞬でもその気に飲まれてしまう。

「なんで?…何であんたがここにいんのよ!!」

「っ!?」

「琴音さん!!」

「てめぇ誰に手あげてんだ!!」

首を狙って伸ばされた手はすぐに相須さんと瀬名さんに離される。

2人に拘束されているのにも関わらず、高崎さんの鋭い眼光はその光を一切欠けさせない。

まるで獰猛な動物のような目だった。