そして、その嫌な予感が当たったのだと知ったのはその後すぐだった。

満面の笑みを浮かべて仕事を持ってきた信洋さんが現れたことで、私も部屋に戻ることになった。

部屋を出るとき、季龍さんの機嫌が悪いような気はしたけど、お仕事の邪魔になるわけにもいかず早々に部屋を出た。

とりあえず、台所の現状だけでも把握しよう。部屋には戻らないでそのまま台所に向かう。

「雑にやるなと言ってるだろう!」

「なによっ!ろくに畳まないくせに!!」

「お前、自分の立場ちゃんと分かってんのか」

突然響いた声にその場で飛び上がりそうになる。

今の声、聞いたことあるような…。洗濯場から聞こえてきたその声に、引き寄せられるようにわずかに空いたドアに手を伸ばす。

『出来ればお前はそいつと顔を合わせるな』

季龍さんの声がギリギリのところでその手を止める。

…やめよう。例えこの先にいる人が誰であろうと、私は関わるべきじゃない。…助けを求められても、その手をつかめないんだから。