どれくらいの時間が経ったのだろうか。

あたりは先程と違いすっかり日が暮れていた。
しばらく街頭に照らされた美しい街並みを眺めていたが、はっとして起き上がる。

「帰らなくちゃ…」

先程悪魔戦った時に負った羽の傷を庇いながら、暗い街をふらりふらりと歩いてゆく。
きっとこの傷では、私はもう飛ぶことはできないだろう。聖なる力も戦った時に使い切ってしまった。
聖なる力がなければ天界に帰ることなどできない。
聖なる力が回復するまでこの地に留まらなければいけない。

途方に暮れながら、1人街を歩く。
人間からは、天使の姿は見えていないから、私の姿は誰にも見えない。
人間達に混ざり街の石畳を通り過ぎてゆく。
時刻は夕食時、あちこちからよい香りが漂ってる。
大通りをすぎ、その先の小高い丘にある教会を目指す。

「教会…あそこなら聖なる力も集まるよね。しばらく居座ろうかな。」

街の中心にあるこの教会。信仰深いこの街にはの人々にとって天界に近い教会はとても大切にされており、物凄く綺麗だった。

教会近くにたどり着き、丘に沿った螺旋階段をゆっくり登ってゆく。
だが、傷ついた体で登る階段は過酷なものだった。
最後まで上りきったと同時に天使は倒れ込む。
横向きに寝転がっていると、つむじ風が吹き抜ける。羽が2.3本抜け落ちる。
太陽が完全に沈み、空は黒く染まり始める。


「綺麗だな…」

誰かがそう呟いた。