「そんなことないってぇ。沙都だって、よく見たら結構美人だよね、桐島君?」

可愛い女子は、フォローも忘れない。でも、そういうフォローのされ方って、フォローされた方は結構キツイ。というのは胸の中に留めておく。

「……」

「そこで黙るなっ!」

ノーコメントの桐島の肩を軽く叩く。

「痛ってぇなぁ」

「そんなに痛くしてませんけど」

桐島が、大して痛くもないくせにわざとらしく肩をさする。

「もう、いいから。ほら、飲みな、飲みな」

そう言って私の飲みかけのジョッキを差し出して来たのは、私の向かいに座る別の同期女子、飯塚希(いいづかのぞみ)だった。

「沙都も飲んで! 沙都だって十分、可愛いんだから!」

優しく包み込むように希が見つめる。なんとも微妙なフォローを察知してすぐさま払拭してくれる。
希はそういう気遣いの出来る子で。
外見についても文句なし。香蓮の可愛さが人間の創造物だとしたら、希の美しさはまさにあるがまま。自然。滲み出る。
でも、それを全然意識していない。
本当なら、傍にいるのも恐れおののいてしまいそうになるけど、この気さくで優しい性格のせいで親しみやすいと来てる。美しくて性格もいい。そう、まさに最強女子だ。そんな希が私は大好きだ。同期の女子の中で、私が一番心を許している子でもある。

「だよね―っ! 私も、そう思う!」

「自分で言ってりゃ、世話ないわ」

そう吐き捨てるように言うと、桐島がジョッキに残っていた生ビールを一気に飲み干した。

桐島ってば、ペース早いな――。

それも無理はない。

桐島が密かに恋い焦がれている香蓮が向かいに座っているわけで。
アルコールでもどんどん摂取して緊張をほどきたいんでしょう。

ほんと、分かり易過ぎ――。

さっきから、正面じゃなく私の方ばかり向いちゃって。何かを喋ってなければいられなくて、私にどうでもいいこと言って。

それでアルコールが回って来た頃に、香蓮に勝負をかけたい――。そんなところだろう。

そういうことをいちいち察してしまう自分がいいんだか、悪いんだか。