臆病者で何が悪い!


「沙都さん、遊びに来てくれて本当にありがとう。とっても楽しかった」

「ぜひ、また遊びにきてな」

お父様とお母様、そしてお姉さまが玄関の外まで出て来て、笑顔で送り出してくれた。

「こちらこそ、本当にお世話になりました。私も、すごく楽しかったです」

何度も頭を下げた。初めて訪れた私を、緊張を和らげるように優しく接してくれて。

とても居心地が良かった。それは、お二人の人柄だ。本当に、素敵な家族だった――。

「沙都さん、またお話しようね。眞の姉だ、とか、そんなの関係なしに、私は、沙都さんと友達になりたいから、眞関係なく、これからも、よろしく」

お姉さまも麗しい笑顔をくれた。

「私の方こそ、よろしくお願いします。いつもは、私、つい世話を焼いたりしっかりしなくちゃって思ってしまうんですけど、お姉さんといると私も気構えたりせずにいられました。だから、もし私で何かお役に立てるのなら、私も、眞さんと関係なくお付き合いしたいです」

そう言うと、お姉さんが私の両手を握りしめて来た。

「沙都さん。ほんと、いい子。これ、渡しとく。何か眞に嫌なことされたりしたらいつでも私に連絡してね」

手渡されたのは、お姉さんの携帯電話の番号とアドレスが書かれたメモだった。

「何を勝手なこと言ってんだよ。嫌なことなんかするか」

「ありがとうございます。すごく、嬉しいです」

そのメモを大事に握りしめる。

名残惜しさを胸に、生田の運転する車に乗り込んだ。

「おまえも、随分姉貴に懐かれたな」

ハンドルを握りながら私に声を掛けて来た。

「私が懐いたんだよ。お姉さん、本当に温かい人。生田の説明は間違いだらけだったよ」

「姉貴は、おまえだから優しくしたんだろ? それを懐くというんだ」

そう言って笑った。その横顔をつい、見てしまう。あの写真の人、いつ頃付き合っていた人なんだろう。