ほんの数秒見ただけの写真。それなのにその残像が脳にくっきり焼き付いている。
どうしてだろう。別に、大したことじゃないのに。おそらく、前に付き合っていた人なんだろう。そういう人がいるのは当然のことで。当然のことなのに。
――関心を寄せた人っていうのはあいつにとって物凄く特別な人。他がどうでもいい分、何よりも大切な存在になる。そういう人間だよ。
お姉さまがさきほど言ってくれた言葉がそのまま蘇る。お姉さまの言ったこと、それは生田の性質を言い当てたものだ。
普通の人以上に、生田は、心を許した人とそうでない人への態度の差は明確だ。付き合うまでの私や他の人に対する態度と、今の生田の私に対する態度はまるっきり別物で。違う人格なんじゃないかというほどに、甘くなる。生田と付き合うようになって三か月、それを私は目の当たりにしてきた。
だからきっと――。この写真に写る女性も、生田の甘い顔を、言葉を、態度を、もらっていたんだ。何より、あの微笑みがそれを証明している。
私にしてくれているのと同じことを、あの人にも――。
って、私は一体何を考えているんだ。それに嫉妬するなんて、図々しいにもほどがある。過去まで自分のものにした
いだなんて、私はいつからそんなに欲張りになったの?
頭では十分なほどに理解しているのに、この心が全然言うことを聞いてくれない。
自分でも驚くほどに心かき乱されている。制御不能になって、私を蝕んで行くようで。こんな苦しくて醜い感情に囚われてしまいそうな自分が嫌だ。



