「……そんなこともあるんだ……」
真顔で、本気で驚いたように私の顔を見ている。女扱いされないなんていうこと自体、経験ないんだろうから、それも仕方ない。
「へへへ。だから、女捨てちゃって生きてました。哀しいことに、ほとんどの男が私を女として見ませんので」
あははと笑ってみせる。そんな風に神妙な表情をさせなければならないような話でもない。
「――でも、じゃあ、私の方がいいのかって言うと、そういうわけでもないよ?」
お姉さまが、笑う私の顔を真剣な眼差しで見ていた。
「たくさんの男に言い寄られたとして。そのことに、何の意味がある? だって、自分にとって愛してほしい男なんて決まっているんだから。その人以外がいくらたくさんいても心は満たされない。本当に好きな人がたった一人自分を想ってくれる。それで十分なんだし」
「お姉さん……」
「兄弟だから、アイツの性格は良く知ってる。他人のことに興味がなくて人にどう見られるとか関係ないし見栄もない。だからこそ、関心を寄せた人っていうのはアイツにとってすごく特別な人。他がどうでもいい分、何よりも大切な存在になる。そういう人間だよ」
その綺麗な目に見つめられて、私は素直に頷いていた。
「……なんだか、沙都さんと話してると落ち着く。何にも身構えなくていいんだもん。素のままでいられる。それに、沙都さん自身が凄く癒しの人なんだろうな」
「癒し、ですか?」
そんな風に言われたことない。いつもサバサバしてるとか。そんな類のことばかりだ。
「うん。だから、これからもよろしく」
「もちろんです」
嬉しそうに笑ってくれるものだから、なんだかとても誇らしい気持ちになった。



